応用数学の入門(続)
なかなか,数学の授業が実践の社会へ,活かされているイメージが付かないといのはよくある悩みだと思います.
それこそ,お店でモノを買うときに値段の計算はするこそ,微分積分や幾何学,統計学,群論は使う機会が無いというのは事実だと思います.
このまえの記事の続きです.
ご覧になっていない方は下記のリンクを参考にしてください.
前回の内容は,
- グラフから読み取れる数量的評価と性質的評価について
- 1次方程式の応用
- 予測と危険率(正規分布の考察)
- 積分の応用(物理量を含めた数量計算)
- 回路(順列問題,空気力学への応用)
- 物理学と生物学におけるスケーリング
でした.
しかし,テクノロジーが浸透し,作業効率を求める中,数学は切っても切れない存在になっています.
今回は,以下についての議論
- 分布力学に基づく,生物学上のモデル化
これは,変化量に基づく方程式,つまり,微分方程式のモデルを作りながら,グラフ作成し,モデル化を行っていきます.途中で,カオスを示す離散近似について言及しているのは,面白い.
- 数学的論理学とコンピュータの関連性について
コンピュータの限界についてどうやって,数学的に証明すればよいのだろうか.もちろん,様々なベンチマークがあり,テストを行うことはできる.
しかし,コンピュータを作り上げる根っこの部分は2進数から成り立つ論理計算が必要とされる.いま,AIやディープラーニングの議論は,この計算機科学とは別物で,コンピュータの限界に迫るものではなく,入力と出力からどのように,パラメータを決め,認識を抽象化するかという試みである.それは数理的に成り立つものであるし,コンピュータが数学的論理で成り立っている土台があるからこそ成り立っているのである.
いまや,量子コンピュータなど未来のコンピュータの製造が間近に迫っている.しかし,計算論理はおそらく同じである.本当の意味でコンピュータの能力向上(ベースアップ)を考えるならば,この学問は重要に思える.
- 振動
ここでは,難しい数式は言及せず,物理学的側面ではなく,数学的側面からグラフを読み解き,その性質について考察をしている.
- 数理計画法(最適化理論)
作業工程の効率化はどのように数学的に最適化が出来るのか.
線形計画法やシンプレックス法,さらに非線形問題への拡張について
説明と議論を進めている.
- 暗号初期法
暗号そのものの歴史を振り返り,現在の暗号化技術への入門として,どのような暗号が最適なのか,考察を行っている.
暗号技術は現代では切っても切れない重要な技術であり,今日では,インターネットが浸透し,重要情報をインターネットを介して,入力することも多々ある(クレジットカードの情報や個人の写真,SNS等).
暗黙の了解(情報が漏れない)として,信用して,私たちはツールを利用している.しかし,そこでの通信(現在のSSH認証を使った公開鍵に基づく,暗号解読と作成アルゴリズム)は堅牢であるとされている.
しかし,暗号というのはその性質上,全面的に数学構造に依存していて,いくら複数の入力パターンがあっても,その構造さえわかれば,いとも簡単に攻撃できる.暗号は安全であるが,その理由は数学によって非常に大きい数の素因数分解の有効な手法が出来あがっていないということによって成り立っているということだ.
テクノロジーは身近な物を便利にし,身の回りにあふれ,そのため我々は無条件に信頼し,信用してしまう.セキュリティの重要性が叫ばれる中,本当に大事なことは発信しないことである.現段階で,一番堅牢なのは個人の心の中である.
SNSの発達で,遠くの人ともつながり便利になった半面.その繋がりを求めるために,個人と公共の境が無くなっていることも事実である.
様々な問題に留意する心構えを身につけるためにも.勉強は一層大事だと感じた.
新しい応用数学入門〈下〉振動の理論からコンピューターまで (ブルーバックス)
- 作者: クリスティーヌボンディ,Christine Bondi,宮崎忠
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/05
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