ディープラーニングと人工知能の歴史
数理科学者にして数理脳科学,情報幾何の第一人者が書いた本.
脳の進化の歴史から脳の構造,そこから得られる理論的洞察.
脳の歴史と3度にわたるニューロブームが詳細に書かれていて,技術の発展を見ることが出来る.
深い洞察と,数学を用いた脳に関する探究が書いてある.
そもそも,この研究は脳の構造の探究から始まった.
人間の脳を模倣することで,同じ能力を持たせることが可能となる,もしくは人間の心の存在の究明だ.
人間の脳では3つの学習システムが動いている.
余談だが,大脳皮質は認識,推論,計画,決定,運動の指令,制御を担っている.
記憶は,海馬と大脳皮質が強調して行っている.
小脳は,ゾンビシステムの一部を担っていて,反射行動を担当している.
つまり,
小脳は教師あり学習によって,反射行動の合否を決め,ニューロン回路網による正解のシナプス効率の取得を自己組織化による教師なし学習で行い,神経系の行動計画は報酬による強化学習(マルコフ決定過程)で行っている.
近年では,このモデルがディープラーニングとして再び注目を集め,現在に至り,人工知能の歴史とは立場の違い(脳を数理的に解明するか,記号を用いて論理的な推論を行うことによって知能を解明する)があったが,深層学習および,ニューロンによる教師あり学習,自己組織化による教師なし学習による事前最適化,これによるパターン認識の精度向上により,IT業界も研究費を投じるようになった.
人工知能の関連性としては,やっと,人工知能界隈で必要とされていた材料.
つまり,パターン認識によって,対象がニューロンによって作られた記号で(数値で)取出せるようになったことだ.このニューロブームによる技術的発展が,どのように人工知能研究に活かされていくのか,人工知能ブーム(シンギュラリティ)に対する期待はいつまで,続くのか,今後が楽しみだ.